ジュノー株式会社と東京成徳大学関谷大輝准教授は共同調査研究を実施、「持ち帰り感情ストレス」に関する実態調査の結果公表

ジュノー株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役 飯岡大昇)は、感情労働研究の第一人者である東京成徳大学応用心理学部 関谷大輝准教授と共同調査研究を実施しました。
全国の20歳から68歳の正規・非正規社員の男女253名を対象に、「感情労働」と「持ち帰り感情ストレス」についての実態調査を実施し、「仕事中に経験する感情」や「勤務時間外に思い出す感情・頻度・内容・ストレス反応」など、調査結果を公表しました。
※本調査結果の詳細レポートは、こちらからご覧いただけます。
【調査の背景】
労働人口の減少により、現在、日本では前例を見ないほどの人手不足に直面しています。さらに、メンタルヘルス不調の増加は企業活動に深刻な影響を及ぼしています。カスタマーハラスメントやパワーハラスメントも増加傾向にあり、従業員の精神的な健康への配慮がますます必要な状況です。そのような中で、従業員の「感情労働」による負の影響が問題視されています。感情労働は、自己の感情を抑え、業務で求められる感情を作り出すため、精神的負担も大きく、心身に影響を与えます。最近では、勤務時間外に仕事中の出来事を振り返り、ネガティブな感情を抱く「感情労働の持ち帰り」も報告されていますが、企業ではその問題は見過ごされがちです。仕事とプライベートの境界が曖昧になった現在、「感情労働の持ち帰り」はますます発生しやすく、影響を軽減しづらい状況です。これを放置すれば、メンタルヘルス不調や離職、組織全体の士気低下を招く恐れがあります。本調査では、その実態を明らかにし、企業が直面する新たな課題と対応策を示唆することを目的に実施しました。
※「持ち帰り感情ストレス」とは、仕事中に経験したことを、勤務時間外に思い出すことで、後から間接的に生じる感情やストレス反応のこと
※「感情労働」とは、顧客や同僚、上司に対して「仕事上求められる感情状態」を、自己の体調や本来の感情に関わらず、意図的に作り出したり、適切に示すなど、感情のコントロールを必要とする労働のこと
【調査概要】
調査方法:インターネット調査
実施期間:2024年9月14日〜2024年12月25日
調査対象:民間企業、公的機関にお勤めの正規・非正規社員の20〜68歳の253名
調査主体:ジュノー株式会社
共同研究者:東京成徳大学 応用心理学部 関谷大輝准教授
※「反すう思考」とは、つらい出来事や自己の問題、過去の失敗などを、繰り返し思い出して悩んでしまう思考パターンのこと
Point1:仕事中に「感情労働」を行っている人が94.5%
図表1:普段の仕事における、感情労働の割合
Point2:勤務時間外に仕事のことを思い出している人が88.1%
⚫︎「まったくない」と回答した人は1.6%しかおらず、ほとんどの人が仕事中の出来事を思い出していることが明らかになった。
⚫︎さらに「とてもよくある」「よくある」と回答した人の割合が47.8%と、頻繁に思い出す人が半数近い割合であった。
図表3 勤務時間外に、仕事中に経験した出来事について思い出したり、考えたりすることがどのくらいありますか?
Point3:事後的想起(思い出し)頻度が多い人ほど、ネガティブな感情を抱きやすい
思い出しで抱く感情は「気がかり」「心配」「不安」がトップ3
⚫︎さらに思い出しで抱く感情は、「気がかりな」「心配な」「不安な」の順番に関連が高く、何かしら具体的な不安や心配が起きていると推測もできる。
⚫︎事後的想起頻度とポジティブな感情との関連もみられなかった。
図表5:仕事中のできごとを思い出したり、考えたりする時、どのような気持ちを感じますか?(事後的想起頻度と、その際に思い出した感情との関連性)
注1:専⾨的な数字となりますので、詳細をお知りになりたい場合は、問い合わせください
Point4:事後的想起(思い出し)頻度が高まるとストレス反応も高まる
図表7 「事後的想起頻度」と「ストレス反応平均値」との関連性
Point5:反すう思考傾向が強い人ほど、事後的想起(思い出し)頻度が高まる
反すう思考傾向が高まるほど、概ね、事後的想起頻度が高まることが分かった。
⚫︎反すう思考という個人の性質にアプローチし、反すう思考傾向を減らすことで、事後的想起頻度を減らし、ストレス反応の抑制につながる可能性があると言える。
図表10:事後的想起頻度と反すう思考の関係性
※報告書の構成比の数値は、四捨五入しているため、合計の数値と内訳の計は必ずしも一致しません。
※本調査結果の詳細レポートは、こちらからご覧いただけます。
【共同研究者 東京成徳大学 応用心理学部 関谷大輝准教授のコメント】
<共同調査研究の趣旨と考察>
今回の調査の主な目的は、感情労働に従事する従業員のストレス反応に、勤務時間後の「思い出し」が、どの程度大きな影響を持つかを調べることでした。その結果、大半の人が終業後にも仕事のことを思い出してさまざまな感情経験をしていること、そして、それがストレスのレベルに無視できない影響を与えていることがデータから明らかになりました。また、「感情労働をすること」そのものによるストレスよりも、「思い出し」がもたらすストレスの方が、場合によると強い影響をもつかもしれないという可能性も見えてきた点は注目に値します。
重要なキーワードは「コミュニケーション」
今回の調査結果から得られた知見をもとに、重要なキーワードをひとつ挙げるとすれば、「コミュニケーション」ではないでしょうか。コミュニケーションの重要性は古くから指摘されてきたポイントであり、新しい発見とはいえないかもしれません。しかし、「思い出し」の現状を見ると、やはり「コミュニケーション」が非常に重要な要素であるということを私たちに再認識させてくれた点が、今回の調査のひとつの価値といえそうです。
たとえば、「思い出し」の中身を見ると、お客様との関わり(お客様に対する感情労働の内容)ばかりではなく、むしろ、同僚や上司とのネガティブなコミュニケーションのあり方が、「思い出し」の材料になってしまっている例が少なくないことが見て取れます。
また、「思い出し」で抱く感情のトップ3が「気がかり」「心配」「不安」であったということも、今回のデータから見えてきた興味深い点のひとつです。これらの感情は、業務の内容について未解決のことがらや、対応に自信のない案件などを思い出していることが想定されます。そうだとすれば、このような不安や心配事は、勤務時間中に同僚や上司に相談ができたり、適切な助言が得られたりする環境が整えば(つまり、社内で良好なコミュニケーションが取りやすくなれば)、多少は軽減できるかもしれません。
<持ち帰り感情ストレスの影響を軽減させる3つの提案>
1)終業後の「思い出し」によって生じる感情やストレス反応にも、目を向けましょう
職業ストレスやメンタルヘルスを考えるときは、就業時間中の業務内容ばかりに目がいきがちです。しかし、実は終業後の感情経験も大きな影響(ストレス反応など)を持つのだということに、個人も組織も今まで以上に目を向けていく必要があると思います。
2)組織的な(組織内での)コミュニケーションのあり方を再確認しましょう
お客様とのコミュニケーションは「相手次第」というところがあるので、現実的には改善しにくい部分がありますが、組織内のコミュニケーションは見直すことができる可能性を秘めています。特に「気がかり」「心配」「不安」のような感情をお互いに少しでも減らしていけるコミュニケーションのあり方や仕組みを再検討する価値はありそうです。
3)反すう(ぐるぐる思考)から抜け出す術を作り出しましょう
個人のセルフケアという観点では、就業後の反すう思考から抜け出すための自分なりの工夫や方法を意識的に見つけ出していく、あるいは作り出していくことも必要でしょう。単に「考えないようにしよう」という努力をするだけではなく、何らかの楽しい活動(スポーツ、友人との会食、ライブ鑑賞など)に集中する時間を増やしたり、どうしても考えてしまう場合には、時間を区切ってあえて集中して考える機会を設けたりすることが有効かもしれません。
関谷大輝
東京成徳大学 応用心理学部
健康・スポーツ心理学科准教授
早稲田大学第二文学部卒業後、横浜市役所に入庁。公務員としての仕事の傍ら、筑波大学大学院を修了。博士(カウンセリング科学)。専門は産業心理学、観光心理学。社会福祉士、精神保健福祉士。2013年より、東京成徳大学応用心理学部准教授として、「感情労働」の視点から働く人のメンタルヘルスに関して研究。
著書「あなたの仕事、感情労働ですよね?」(花伝社)
<本件に関するお問い合わせ先>
調査内容・データ詳細に関するお問い合わせや、報道関係者の取材・お問い合わせ
ジュノー株式会社 ワークウェルネス事業部
担当:但野かおり
問い合わせアドレス : tadano-k@junowedding.jp
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